2021年度(令和3年度)水野忠則特別記念賞受賞者の紹介

野口 正一(のぐち しょういち)

野口正一君は、1960 年に東北大学大学院(博士課程)を修了し、東北大学電気通信研究所入所後、代数的オートマトン理論、初期のコンピュータシステムの開発の他、高度な情報通信技術の研究開発に従事し、情報科学・工学分野の最も重要なパイオニアとして、今日のコンピュータ・サイエンス、情報通信技術の発展を牽引してきました。

1960年代、東北大学の研究グループは代数的オートマトン及びセル構造オートマトン理論分野で世界をリードし、同氏はこのグループのトップリーダーとして、オートマトンの特性化理論及び完全性理論を構築しました。一方、大学院生時代から、日本の初期のコンピュータ開発に従事し、昭和30年代の初頭、商用機のプロトタイプとなった当時国産最大の大型計算機SENAC-1 の設計開発をNECと協力して行いました。

その後、東北大学電気通信研究所教授、同大大型計算機センター長・応用情報学研究センター長、情報処理学会会長、会津大学学長、公益財団法人仙台応用情報学研究振興財団理事長といった重要な役職を通して、知識情報処理(今で言うAIや人工知能)分野やコンピュータ・ネットワークシステムの分野においても、重要な貢献を果たしています。特に、情報通信分野では、コンピュータ・ネットワークシステムの構成理論並びに同ソフトウェアの理論体系を確立されました。また、日本のネットワーク研究者グループの研究組織JAINを創設し、多くの国家プロジェクトのリーダーとして、日本のコンピュータ・ネットワーク工学の発展に大きく寄与されました。

次世代の研究者育成に関しては、次の二つの分野での貢献があります。

  1. 学術分野:日本のICTの研究を牽引する国公立大学を中心とする60数名の教授人材の育成、また、国立高専の校長2名、大学の副学長2名、学長1名(中国)が輩出されました。

  2. 産業界分野:日本の情報産業発展を支えた数多くの研究・開発者、例えばNEC副社長、NTT研究所所長等多くの人材を産業界に送り出しました。

日本の若手研究者の育成については、次の二つの貢献があります。

  1. 情報処理学会マルチメディア、分散、協調とモバイル(DICOMO)シンポジウムにおいて、野口賞(優秀デモンストレーション賞)を2002年に創設、現在に至る。

  2. 情報処理学会東北支部における各年度最優秀論文を表彰する野口研究奨励賞を2002年に創設、現在に至る。

以上のように、同君が、高度な情報通信技術の研究・発展と高度な人材育成に尽くした貢献は、誠に顕著であります。