2022年度(令和4年度)水野忠則特別記念賞受賞者の紹介

田中 英彦たなか ひでひこ

田中 英彦君は、1970年東京大学大学院(博士課程)を修了し、東京大学に於いて情報工学に関わる教育・研究に携わって来られました。研究分野としては、計算機アーキテクチャ、並列処理、分散処理、人工知能、自然言語処理、メディア処理、ディペンダブルコンピューティング等広く情報工学の研究に従事されました。また、東京大学大学院情報理工学系研究科を立ち上げて初代の研究科長を務めるとともに、同時期に次々と作られたわが国の情報系大学院間の連携活動を開始されました。退官後、情報セキュリティ大学院大学の設立に携わり、情報セキュリティ専門家の育成に務められ、研究科長、学長を歴任してこられました。

学会活動に関しては、情報処理学会で、 OSI規格により標準化功績賞、情報工学研究で功績賞、名誉会員、また、世界に広めた人工知能研究で人工知能学会功績賞、会長、IEEE Life Fellow等に推挙されておられます。

研究活動では、第五世代コンピュータプロジェクト、リアルワールドコンピューティングプロジェクトなど、国家プロジェクトの推進委員長としての役割も大きいだけでなく、重点領域研究「超並列処理」代表者、JST CREST「情報社会を支える新しい高性能情報処理技術」統括、10社の企業会員と国内22大学の研究室からなる研究コンソーシアム並列分散処理研究推進機構の研究代表者として共同研究を推進し、マシンJump1の実現とそのソフトウエアの出版が為されています。更に、New Generation Computing 専門英文誌編集長、日本学術会議会員、総合科学技術会議情報通信プロジェクトチーム基盤技術主査などの役職も務められました。セキュリティ分野では、先導的ITスペシャリスト育成推進プログラム「研究と実務を融合した人材育成プログラム」代表として、この分野のわが国における最初の専門教育機関において多くの大学院生の育成に務められました。

研究室では、サービスベースシステム、超並列推論計算機PEI64のハードウエア/OS/言語、大規模データ利用による天気予報、メディア処理や自動採譜、大規模データパスプロセッサ、セキュリティ対応では、マルウエア動的挙動解析、セキュリティ要求分析等の研究を通して、情報工学分野の博士76名(課程博士54名、論文博士22名)の俊秀を育てられ、産業界・教育界で活躍中の多くの人材を輩出しています。そのため、学術系にとどまらず、多くの産業界とも交流があり、現在も、日本ネットワークセキュリティ協会会長、服部報公会理事長を務めておられます。

以上のように、同君が、高度な情報技術の研究・発展と高度な人材育成に尽くした貢献は、誠に顕著であります。