2020年度(令和2年度)水野忠則特別記念賞受賞者の紹介

井上友二いのうえ ゆうじ

井上友二君は、1973 年に九州大学大学院(修士)修了し、電電公社電気通信研究所に入社後、情報通信ネットワークの研究開発に従事し、特に国際標準化や国際学会で活躍されました。その後、NTTグループ、トヨタグループの研究開発責任者として活躍される一方、(社)情報通信技術委員会理事長、電子情報通信学会会長を歴任されることを通じて、日本の情報通信技術の発展に大いに貢献されました。

同君は、30代で取り組んだISDNレイヤ1のI.430勧告を通じて、「若くして歴史に残る仕事」ができる喜びを国際標準化に感じたそうです。その後、ディジタル網品質の総論I.350、伝達網アーキテクチャG.803、同期ハイアラーキG.773/G.774への貢献、さらにはデファクト活動であるTINAの技術委員長を長年務められ、日本の国際標準化活動を牽引されました。同君は、見た目通り豪放磊である一方、性格的にきめ細かい心遣いの持ち主で、ゴルフ、蕎麦打ちなどの趣味を活かし、国内外の技術者、標準化メンバの輪を大いに広めました。その輪が、結果的に日本の技術を海外に普及する「後押し」の力になりました。企業の研究開発責任者としては、情報通信分野の産学連携に力を注ぎ、特にNTT研究開発責任者時代に内外約20の大学との包括的契約を結びました。産学それぞれが自分の殻に閉じ込まず、異なった技術分野の人材がぶつかりあうことを是とすることで、セキュリティ応用などの境界領域の研究を促進しました。このような活動に伴い付随的に、産学連携に関わったNTTグループの研究開発者から、多くの博士取得者が誕生しました。情報通信協議会メンバにおいてもNTTグループ関係者17名のうちの約70%は、同君の上記活動に影響を受けた者です。


以上のように同君が、高度な情報通信技術の研究・発展と、博士育成に尽くした貢献は、誠に顕著であります。